INTRODUCTION
『パンク侍、切られて候』(2018年)以来、5年ぶりとなる石井岳龍監督最新作が遂に劇場公開。神戸芸術工科大学での映画創作研究活動の集大成にして、原点たるハードコア精神に立ち返った石井岳龍最大の問題作にして怪作が遂にベールを脱ぐ!
学生たちが足早に向かった研究室に向かうと、拳銃を呑み込み、発砲!!突然の失踪!強烈な印象を残す「石井岳龍教授」を監督本人が演じ、さらに制作スタッフ全員がカメラの前に立ち、フィクションとドキュメントがせめぎ合ってゆきながら、映画を学び、作り上げていく混濁したプロセスそのものを、石井岳龍の脳内電気信号純度100%で出力!!!
常に表現のフロンティアを切り開いてきた石井岳龍による厳格な実験精神と秘めた獰猛さが結実したISHII映画の到達点たる2時間45分のインナートリップ!
STORY
神戸芸工大映画コース教授でありながら、自らの思想「自分革命闘争ワーク」の実践に駆られ狂的状態に陥り、突然失踪してしまう石井岳龍。
彼が残した「個の想像力や認識の拡張、意志の強化を目指す内意識革命の為のワークテキスト」の扱いに、大学同僚の武田助教、助手谷本は困惑。葛藤後、任意の学生とワークの実践を試みる選択をし、同時に武田は失踪した石井の影を追い、やがてそれは謎の洞窟探検にまで至ることになる。学生たちはそれぞれが選択したテキストの実践をすることによって、まるで映画の中のような拡大した想像力と意識拡張の迷宮世界に迷いこむ。彼らはこの体験を通し、自分たちの意志・想像力・認識を狭め拘束している目に見えない影の圧力の存在や自分たちを覆う閉塞感、無力感、孤立感に気づきはじめ、武田助教も、石井の影が残された洞窟捜索が映画における闇の狂気や光の始原力に至る気づきに繋がる事を体感してゆく。だが失踪した当の石井は、洞窟を抜けた山奥で実践していた究極ワークの最中、象徴的な影の圧力の存在にあっさりと惨殺される。が、その映像はストップされ、一転して別現実のドキュメントが始まってゆく。
映画「自分革命映画闘争」を武田と編集しながら作品の方向性に混乱し苦悩する監督である石井教授。彼は、この後の撮影での脚本意図を理解できない学生を説得しながら自分の困難を隠してリハーサルに打ち込むことで、失速した作品製作の事態の打開と作品の再構築に闘志を燃やす。しかし、突然、未曾有のコロナ禍が巻き起こり、それはこの撮影にも襲いかかり、大学の閉鎖や課外活動の禁止も発生し、石井はいよいよ制作崩壊のピンチに陥った…。
DIRECTOR'S STATEMENT
映画館は現代都市になくてはならない洞窟、現代都市の心の避難所シェルター
映画館は、これまで何度も私の絶望や孤独を救ってくれた、私にはなくてはならない大切な場所です。映画館で体験する「映画」は、「分離」「分断」「孤絶」化された人の心を、平等に、暗闇とマジカルな光と木霊で包み込んでくれて、貴重な体験とインスピレーションを与えてくれます。今回は「自分」を「革命」する「映画」の「闘争」を、へっぽこ監督が仲間たちと力を結集して、なんとか「面白い映画」を創りあげたいと、これまで通りただ必死に粘りました。配信でスマホで映画を情報として見てしまうのが当たり前になった今だからこそ、「映画館で楽しんで体感して観ていただくにふさわしい映画」にしようと自分革命しながら闘争した映画です。この作品は一人でも多くの方に、是非、映画館で臨場体感していただきたいのです。
PROFILE
石井岳龍ISHII Gakuryu
(旧名:石井聰亙 ISHII Sogo)
1957年福岡市生まれ。映画監督。66歳。1976年日本大学芸術学部映画学科入学後、8mm映画『高校大パニック』を監督。以降、様々な映画、音楽映像作品等を手がける。2006年より神戸芸術工科大学教授(2023年3月退官)。
FILMOGRAPHY
映画作品
『高校大パニック』(1976)
『1/880000の孤独』(1977)
『高校大パニック』(1978・澤田幸弘監督との共同監督)
『狂い咲きサンダーロード』(1980)
『シャッフル』(1981)
『爆裂都市 BURST CITY』(1982)
『アジアの逆襲』(1983)
『逆噴射家族』(1984)
『ノイバウテン 半分人間』(1985)
『THE MASTER OF SHIATSU 指圧王者』(1989)
『TOKYOU BLOOD』(1993)
『エンジェル・ダスト』(1994)
『水の中の八月』(1995)
『ユメノ銀河』(1997)
『五条霊戦記/GOJOE』(2000)
『ELECTRIC DRAGON 80000V』(2001)
『鏡心』(2004)
『生きてるものはいないのか』(2011)
『シャニダールの花』(2013)
『ソレダケ / that’s it』(2015)
『蜜のあわれ』(2016)
『パンク侍、切られて候』(2018)
『almost people』(2023/横浜聡子・石井岳龍・加藤拓人・守屋文雄監督による新形式の映画作品 )
TVドラマ作品
私立探偵 濱マイク 第8話 「時よとまれ、君は美しい」(2002年、日本テレビ系)
ネオ・ウルトラQ 第1話「クォ・ヴァディス」、第4話「パンドラの穴」、第8話「思い出は惑星(ほし)を越えて」(2013年、WOWOW)
武田 峻彦TAKEDA Takahiko
撮影・照明・VFX・編集
大学院時代に石井岳龍の授業にアシスタントとして参加。制作会社での勤務および神戸芸術工科大学映像表現学科の実習助手を経て、現在は作中同様映画コースの助教。『生きてるものはいないのか』(11)から『自分革命映画闘争』(23)まで主に石井岳龍作品の編集として参加。また『ソレダケ/that's it』(15)『パンク侍、斬られて候』(18)では撮影応援としても参加。その他の主な参加作品として『常闇の王國』(19/津田翔志朗監督)編集、『旧グッゲンハイム邸裏長屋』(21/前田実香監督)編集など。自主制作作品として『神様は綺麗な華から摘む(仮)』(23年公開予定)を制作中。本作同様、撮影・照明・特殊効果・編集に加え、自身で監督を務めている。
勝本 道哲KATSUMOTO Michiaki
音楽・音響スーパーバイザー
工学博士。独立行政法人情報通信研究機構(NICT)実空間立体音響の研究を行い、2010年にNICT発のベンチャー企業を設立し、新しい音響環境の普及促進活動を始める。研究と同時に映画音響のミックスに携わり、楽曲も提供している。石井岳龍監督とは、様々な実験的音響表現手法を開拓している。
谷本 佳菜子TANIMOTO Kanako
美術
神戸芸術工科大学映画専攻2期生。卒業後、東京藝術大学大学院にて映画美術を修了し、映画・映像作品の美術、装飾、小道具等全般に携わる。石井監督作品では映画『生きてるものはいないのか』(11)、映画『シャニダールの花』(13)、MV「人の瀬」(22)に関わった。本作品の撮影時は映画コースの実習助手として働いていた。現在は”好きなことをして暮らす”をモットーに創作をしながら生きている。
折野 正樹ORINO Masaki
録音・音響編集
神戸芸術工科大学在学中の主な監督作品として、THE TOMBOYS「フルーツキャンディ」MV(19/078FMVC入選)、「FLYLEAF」(20/池袋みらい国際映画祭 観客賞受賞)など。その他、SUBARU MOVIE RALLY「ON SNOW COVERED ROAD」(19/大西敬介監督)録音・音響編集・音楽、「神戸三宮センター街メインストリートアワード」楽曲制作、「SOULMAN」(22/宮野誠基監督/TAMA NEW WAVEある視点部門入選)撮影監督・プロダクションマネージャーほか。現在は映像制作会社にて主に企業VPやライブ映像などの撮影、編集、音響編集などを行っている。主な参加作品として「ラジオ関西 TVCM」撮影・編集・音響編集、「NHK 8K 『海の地震の巣を暴け』」撮影、「¥ellow bucks - THE SHOW ’22」撮影補助、「WIRED MUSIC FESTIVAL ’22」撮影応援など。
向田 優MUKADA You
助監督・劇中デザイン
『生きてるものはいないのか』(11)で演出デビュー、『ソレダケ /that's it』(15)ではコミック・アニメ作画、『シャニダールの花』(13)『蜜のあわれ』(16)の絵コンテを担当。主な助監督作品に窪塚洋介主演『Sin Clock』(23/牧賢治監督) 、『メンドウな人々』(23/片岡千之助主演)、『ソローキンの見た桜』(19) など。池田エライザ監督『夏、⾄るころ』(20) ではアシスタントプロデューサーを担当。その他に安室奈美恵などのドームコンサート収録スタッフ、経産省「福島浜通りシネマプロジェクト」のメインスタッフとしても参加。監督作品には『未熟エッグパンクハーモニー』(19/元町映画館上映)、『夢が溶ける』(21)などがある。今年3月末には初個展「脳内BEAM.」を神戸北野にて開催予定。
佐々木 姫菜SASAKI Himena
出演
香川県出身。2017年神戸芸術工科大学映画コースに入学。石井教授指導のもと、映画の基礎を学ぶ。在学中に自主制作作品『徒花』、卒業制作作品『ひかるすべてのものたちよ』を執筆、監督。卒業後は、大阪の映像制作会社で動画の撮影、ディレクション、編集を務める。
上島 瑛人UESHIMA Akito
出演・演出助手
神戸芸術工科大学在学中の監督作品として、淡路島オールロケで撮影し、娘を失った夫婦を描いた『トロイメライ』(19)、モラトリアムを生きる男女6人の群像劇を描いた『今が未来だった時のこと』(21)など。主な参加作品として『Sin Clock』(23/牧賢治監督)監督補、『ハイスク〜来年、また桜の下で〜』(22/安藤エイム監督)演出部、短編映画『imagin』(22/bde.kobe)演出部などがある。
宮野 誠基MIYANO Tomoki
出演・演出助手
2022年3月神戸芸術工科大学映画コース卒。卒業制作で多様性をテーマに13歳のハーフの少年を描いたミュージカル作品『SOULMAN』(22)は、その年の卒業展示会で学科賞受賞後、第23回TAMA NEW WAVEある視点部門入選。また本作品の音楽イベントや劇場上映の機会を自ら立ち上げ精力的に公開した。現在、カナダ在住。
THEATER
都道府県 劇場 公開日
東京 ユーロスペース 3月25日(土)
兵庫 元町映画館 3月18日(土)